純・情・愛・人
3-2
ゴールデンウィーク初日。現れた宗ちゃんは滅多に見られない私服姿だった。

もちろん三つ揃いが一番だけど、シンプルに細身のパンツに薄手のジャケットを羽織り、足許はカジュアルなローファーでも抜群に格好いい。

髪もラフにスタイリングしていたり、手首にバングルが見え隠れするのも新鮮で。スポーティなステーションワゴンのハンドルを操る一挙一動に目を奪われ、景色は全然目に入ってこない。

送ってもらうときは運転手付きのセダンだから、後部シートに隣り合わせだ。助手席に収まるのも久しぶりだし、連休の後半に釣り旅行が待つお父さんと同じくらい、内心は浮かれていた。

「そろそろ高速に乗るぞ。気分が悪くなったら我慢するなよ?」

「宗ちゃんの顔見てるから平気ですよーだ」

「ずいぶん安上がりだな」

端正な横顔にクスリと笑いが覗く。

スーツを着ていない時の宗ちゃんて、『格好いい』の中にちょっとだけ『可愛い』が混ざるのは内緒。わたしに見せる素顔は、値段のつかない幻の宝石なんかよりずっと価値がある。
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