純・情・愛・人
一番のおしゃべりがお父さんなのは疑う余地がない。おじさんから広くん、広くんから朝倉君。わたしの個人情報って、有馬の家で空気より軽いんじゃ。内心で溜息を逃す。

「・・・家の近くでお父さんも安心だから、自由に使えばいいって宗ちゃんが」

否定はしない。本当のことも言わない。嘘じゃないことを答えた。

「おー、オレも女に言ってみてーな。手切れ金代わりに園部にやったんじゃねーかって、どっかのダレかがプチ切れててよ」

「手切れ・・・って。どうしてそうなるの」

思わず呆れるわたし。どっかの、って、広くん以外いないのは明白。

「宗ちゃんを誤解しすぎ。お父さんにもちゃんと話してくれたし」

「だろー?アイツ、オレの言うコト聞きゃしねぇ」

茶化すように朝倉君は軽く笑い声を立てる。

運ばれてきたランチセットを食べ終えるまで会話が途切れることもなく。大学や今の会社のこと、気が付けば自分ばかりが答えていた。

「朝倉君はいつから岸川の人になったか・・・訊いてもいい?」

ホール係が食器を下げたあとも、飲み物のグラスを前に今度はわたしから。

「事務所に出入りするよーになったのは、ジュークぐらいかぁ?センパイに紹介されて、下っ端はナンでもやらされたわー。園部もオレを信用しねーほうがいーぞ?コウほど行儀よくねーから」

人が悪そうに口角を上げながら、それでも本当に腐りきっているかどうかくらいの見分けはつく。と思う。
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