純・情・愛・人
その晩も存分に愛された。甘い鞭で締め上げられるような愛撫に、絶え絶えになった。

「そう、ちゃ・・・、も、だめぇ・・・っ」

敏感なところを舐られ、脳髄が灼かれる。どこに触れられても電流が走る。決して自分本位じゃないのにどこか。容赦のない抱き方をされている。気がする。

「・・・嘘を吐くんじゃない」

妖しい気配でわたしを情愛の海に沈める。

いつ意識が飛んだのかも記憶が曖昧なまま、スマートフォンのアラームで目覚め。隣りで寝息を立てる宗ちゃんを起こさないよう、そっとベッドから抜け出して熱めのシャワーを浴びた。

いつにも増して躰が重い、頭の芯が怠い。今日一日を乗り切れば明日は土曜だ。自分を励まし、手足を動かした。

わたしがマンションを出るのは毎朝8時前後。その10分前に起きてきた宗ちゃんにドリップ式の珈琲と、ロールパンサンドを用意して、バッグと鍵を手に取る。

「じゃあ行ってきます」

「ああ、気を付けてな」

お化粧が移るから鼻の頭同士をくっ付け、キスの代わり。寝起きの顔でも、髭を剃ってなくても、どんな宗ちゃんでも愛おしい。

「薫」

呼び止められて振り返る。

「もっと我が儘でいい。・・・遠慮しすぎだ、俺に」

ダイニングテーブル越し、目を細めた宗ちゃんは淡く口許を緩めた。
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