純・情・愛・人
「薫・・・!」

テレビのゴールデンタイムが終わりかけの頃。モニターホンのチャイムが鳴り、出迎えたわたしを腕の中にすぐさま引き寄せた宗ちゃん。

「気付いてやれなくて悪かった。体は平気か?あまり俺を驚かせるな」

「・・・ごめんなさい」

「謝ることじゃないだろう」

「そうじゃなくて・・・宗ちゃんに嫌なこと言ったから」

「言ったか?俺は憶えていないが」

優しい声にゆるゆると顔を上げた。それは聞き流したという意味じゃなく、受け止めて胸に仕舞った風に聞こえた。

細まった目と合ってそのまま唇を重ねる。いつもより柔らかく舌を絡められ、頭の芯が溶かされそうになったところで、居間から催促の声が。

「オーそろそろ上がってこいや、宗」

名残惜しそうに額に口付けが落ち、革靴を脱いだ宗ちゃんが当たり前にスーツの上着を預けてくれる。そんな些細な仕草が幸せに思える。

彼女に宗ちゃんを明け渡さないわたしは、十分わがままで欲張りだ。少しだけ複雑だったのを見ない振りで、宗ちゃんの背中を追いかけた。
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