純・情・愛・人
4-3
「・・・おい薫子、動けねぇなら今日は休め。会社に連絡してやる」

「・・・・・・・・・うん・・・」

十週目くらいでだんだん楽になってくるらしいつわり。今は八週目に入って、胃もたれに食欲不振、とにかくだるくて眠い。地味に辛い。

七時のアラームで意識は醒めているのに、起き上がる気力がないわたしの様子を見に、広くんが寝室を覗いてくれる。十五分経ってもリビングに出て行かない時、入ってきていいルールは宗ちゃんの承諾済みで。

上司には、救急搬送された週明けに妊娠と退職願を申し出た。見るからにげんなりした表情で多少の嫌味を返されたものの、欠勤や遅刻早退を許容してもらえているだけ、ありがたい。

出産予定日は年明けの半ば過ぎだそうだ。つわりは、治まるのに遅くて七月いっぱいかかるかもしれない。深町さんへの引き継ぎも考え、八月末付けの退社を決めた。

事情を説明して謝ると、『胸張ってさ、堂々と辞めなよ』と屈託なかった彼女。裏表のない人だから友達になれる気がしたけど、極道と繋がるわたしが何かに巻き込んだら、取り返しがつかない。交換した連絡先は、業務のアドバイスで役立てばそれでいい。

「水飲むか?」

重たい瞼をこじ開ける。フタ付きのストロータンブラーが、枕脇にひとりでに立っているのかと、ぼんやり。
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