純・情・愛・人
「そういやコウが帰ってくるんだろ?」

甘塩っぱく煮込まれた具を溶き卵にからめ、するっと飲み込んでお父さんが言う。

「コウって」

「宗の弟だよ。どっかヨソに行ってたんじゃねーのか」

「うん、宗ちゃん家の“親”の組に出向っていうの?・・・戻るんだ」

「カズが呼び戻すってな、聞いたんだよ」

おじさんの話だったら眉唾(まゆつば)じゃなさそうだけど。とくに会いたいわけでもなかった。宗ちゃんと違い、ちょっと・・・苦手だ。

広己(こうき)くんはわたしより二つ下だった。昔は『かおるちゃん、かおるちゃん』て懐いてくれていたのに。

思春期に突入したら話しかけても無視されたり、彼の成人のお祝いを渡しに行った時はひどく素っ気なかった。・・・冷たかった。

心当たりがなくてもどうやら疎まれていたらしい。だから、しばらく有馬の家を出ると宗ちゃんから聞いて正直ほっとした。二年くらい顔を合わせてなかったと思う。やっぱり今でもわたしをそう感じているんだろうか。
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