愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
本気で結婚するつもりですか?

恋か仕事か、どちらかいっぽうを選べと言われたら迷わず仕事を選ぶ女。仕事ひと筋で恋には興味がなさそう。

他人から見た自分の印象を人づてに聞いた倉科(くらしな)(みなみ)は、やっぱりね……とため息を漏らした。

実際には南にそのふたつの選択肢はなく、仕事を選ばざるを得ないのが切ないところである。

最近はバリキャリなどと、もてはやされるようにまでエスカレート。イメージが先行してしまい、本当の自分とどんどん乖離していくいっぽうなのだ。

ぱっちりした目元に、小さいけれどぷっくりした唇。緩やかな癖のある栗色の髪は艶やかな絹のよう。
百合の花のようにしなやかで優美な顔立ちをしているが、それを生かせていないのか二十八歳にもなって浮いた話はひとつもない。

恋人がいたのは大学時代のたった一度きり。それもたった半年で振られてしまった。
もはや、どうやって恋愛したらいいのか本人にすらわからなくなっている。


「南さ~ん、助けてくださ~い! このあとってどうしたらいいですか?」


背中合わせの席から南に助けを求める声がした。
顎のラインで揃えられたワンレンボブに子鹿のように優しい目をした、四つ年下の神尾(かみお)真帆(まほ)である。
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