愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
白を基調としたリビングは天井まである縦長の窓が何連にも連なり、光を存分に取り込む。二層吹き抜けの天井高を黒のサッシが引きしめ、ベージュの革張りソファなど華美にならないエレガントさを目指した空間である。
リビングとダイニング、南と碧唯それぞれの部屋のほかに寝室がある3LDKの間取りは、これまで3人家族で2LDKに住んでいた南には贅沢すぎてちょっと落ち着かない。住人というよりはお客さんの感覚である。
荷物の片づけが万全でないため分担して取り掛かり、あっという間に時間が経過していく。気づけば六時を過ぎ、空腹を覚えたため書斎にいる碧唯に声を掛けた。
「碧唯くん、そろそろご飯にしない?」
碧唯が「もうそんな時間か」と腕時計を見る。
外はまだ明るいため驚くのも無理はない。
「食材がまだ揃ってないからデリバリーにする? それとも外に出る? スーパーに買い出しにいってから作ってもいいよね。碧唯くんの腕前には敵わないかもしれないけど、手の込んだものでなければ私も作れるよ」
実家では家事が当番制だったため、ひと通りの料理をしてきた。碧唯の好みに合うかどうかはべつとして、そこまでひどい腕前ではないと思う。