愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~

碧唯が南を連れていったのは、マンションから歩ける距離にある、隠れ家のようなフレンチレストランだった。

住宅街に溶け込むようにしてあるその店は、看板がなく知る人ぞ知るレストランらしい。
ひと足先に越してきてきた碧唯は、近辺を散策しているときに偶然見つけたという。

緑溢れるシャレた庭を有した一軒家のような造りは、とうてい店とは思えない。
門を抜けてアプローチから店内に足を踏み入れると、白を基調としたシンプルな空間が広がっていた。


「瀬那と申します」
「瀬那様でございますね。お待ちしておりました」


清潔そうな白いシャツと黒いトラウザーズに身を包んだ男性スタッフが、南たちをテーブルに案内する。


「碧唯くん、予約してたの?」


碧唯は驚く南に涼しい顔で「ああ」とだけ答えた。

押しつけがましくないスマートさが心憎い。これまでもそうだったはずなのに、この頃やたらと碧唯のそういった一面が目につくようになったのはどうしてだろう。
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