愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
店内には四人掛けのテーブルが六つだけ。間隔を広くとってあるため、個室でなくてもゆったりと過ごせそうである。窓から手入れの行き届いた庭が見え、ライトアップされた低木のコニファーがかわいらしい。
「コース料理でいいか?」
「碧唯くんにお任せします」
メニューを見てすぐにパタンと閉じる。
説明は日本語でもされているが、料理名はフランス語表記のため南にはさっぱりだった。
それに比べて碧唯の発音の良さは耳に心地いい。フランス語まで話せるエリートぶりを見せつけられてしまった。
ほどなくしてフルボトルのワインがテーブルに届けられる。グラスを満たしたのはクリアな桜色をしたロゼだった。
ふたりの新生活スタートを祝して乾杯する。口当たりのまろやかなワインがスーッと喉を通っていく。
「南に渡したいものがある」
ワイングラスを置き、碧唯がポケットから小さなケースを取り出す。それは中身がなにかすぐにわかるほど、特徴のあるものだった。
「それって……」