愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~

南が凝視するなか碧唯がケースを開けると、ライトを浴びたダイヤモンドがきらりと輝く。緩やかにカーブを描いたデザインのエンゲージリングが、惜しげもなく美しい光を放った。


「左手、出して」
「……いいの?」
「あたり前だ」


南たちは交際を経ていない、友達夫婦。それも離婚も辞さない結婚である。
普通とは違うため、夫婦の象徴であるものをもらえるとは思ってもいなかった。

指輪の煌めきに目眩を覚えながら、おそるおそる左手をテーブルの上に出す。
碧唯はその手を取り、薬指に指輪を滑らせた。大事なものを扱うような手つきが胸を甘くくすぐる。


「じつはもうひとつ」


そう言って、碧唯がさらにケースをテーブルにのせた。


「え? もうひとつって……。――もしかして」


南のひらめきと同時に、もういっぽうのケースが開かれる。中にはリングがふたつ、これまた眩い光を放っていた。
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