愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
その後、焦がしバターが香り立つ鱈のガレット焼きや複数の肉を寄せたテリーヌをパイで包んだパテ・アン・クルートなどを堪能し、南たちはレストランを出た。
湿気のあるもわっとした風が体にまとわりつく。梅雨が終わり、昼間の暑さを溜め込んだ空気は、夜になっても高い温度を保っていた。
ただひとつうれしいのは、雲のない夜空に浮かんだ真ん丸の月が見える点だろうか。
「少し遠回りして帰らないか?」
碧唯が南の手を取り、指を絡めた。
まだ慣れないぬくもりはドキドキするくせに心地いい。
ここからマンションまで真っすぐ帰れば十分程度だが、少し夜風にあたろうと誘う。
「そうね、月も綺麗だしね」
南が指差した空を碧唯が見上げる。
街灯の役割もできそうなほどの月明かりだ。
「綺麗だな」
「中秋の名月にはまだ早いけど、ちょっとしたお月見ね」