愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
南たちは来たときとは逆方向に歩きだした。
レストランを大きく迂回するようにしてゆっくりマンションを目指す。
夏特有のコンクリートやアスファルトの匂いが、そよ風に乗って南たちの間を抜けていく。
「明日も暑そうだね」
「ああ。早いところ秋になってもらわないとバテるな」
そんな他愛のない話をしながら歩いていると、ふと鼻先を香ばしい匂いがかすめた。
「なんか匂わないか?」
「うん、なにか焼いてる?」
醤油の焦げたような匂いに混じって、甘い匂いもする。
ふたりで鼻をクンクンさせながら足を進めていると、通りがかった神社の鳥居の向こうにオレンジ色の灯篭の明かりや屋台が並んでいるのが見えた。
「縁日?」
「みたいだな」
神社の境内に向かって提灯がいくつもぶらさがっている。