愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
「そのときのリベンジ」
「なかなか執念深いな」
「あっ、今のちょっと意地悪な言い方ね。粘り強いって言ってくれる?」
碧唯に笑われながらりんご飴をひとつ購入し、再び歩きだした。
「碧唯くん、ひと口食べる?」
「いや、俺はいい」
「じゃ遠慮なく、いただきます」
彼のほうに突き出したりんご飴に歯を立てる。パリッと音を立てて飴が割れると、中から甘い果肉が出てきた。
やっぱりおいしい。懐かしい味がする。
小ぶりのりんご飴はあっという間に南のお腹の中に収まった。
棒を近くのごみ箱に捨ててあてもなくぶらぶら歩いていると屋台の列が途切れ、南たちは気づけば境内にまでやってきた。
小さな本殿がひっそりと建ち、提灯や灯篭の明かりもなく、縁日の賑やかさが嘘のよう。
石畳を歩くふたりの足音だけが、周りの木立の中に響いていた。