愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~

「誰もいないね。戻る?」


碧唯を見上げたそのとき、南の視界が遮られると同時に唇にやわらかな感触を覚えた。
軽く吸い上げてすぐに離れた彼が、間近で微笑む。どことなく熱っぽい眼差しなのは南の思い違いか。


「南の唇、甘いな」
「そ、それはりんご飴を食べ――」
「もう一回」


最後まで言わせてもらえなかった。
碧唯に腰を引き寄せられ、唇がもう一度重なり合う。南の言葉ごとさらうような、触れるだけでは済まされないようなキスが、南の鼓動を加速させていく。
腰を抱く腕の逞しさと引きしまった胸板を感じて頬が熱い。

今にも唇を割りそうな気配がして、彼の胸を手で押した。


「誰かに見られちゃうから」


鼓動の乱れが声を震わせる。優しく重ね合わせていただけなのに息が上がっているのを思い知らされた。
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