愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~

言葉少なに遠回りしてマンションに帰り着き、先にお風呂も済ませた南は、まだ真新しい匂いが残る寝室で落ち着きなくソワソワしていた。
結婚してから初めてふたりで過ごす夜。つまり初夜である。

イタリアに行ったときにはベッドとソファで別々に寝たが、夫婦になった以上そうするわけにはいかない。そもそも子どもが欲しい南の希望のもとに至った結婚なのだから。
ここで拒んでいては話にならない。

頭ではわかっているが、いざその状況に置かれ、全身が緊張に包まれる。
つい先ほど神社の境内で交わした濃厚なキスを思い出し、胸が異常なリズムで脈を刻みはじめた。

心の裏側に見え隠れする謎の感情の正体を知るのが怖く、即座にそこから目を逸らす。

南が深呼吸を何度か繰り返していると寝室のドアが開き、碧唯が入ってきた。
白いTシャツにハーフパンツというラフな格好はイタリアでも見たはずなのに、あのときとは結婚前と結婚後で状況が違うせいか、むやみに南の心臓をいたぶる。


「ボーッと突っ立ってないで座れば?」


ベッドに腰を下ろした碧唯が、自分の隣のスペースを手でトントンとする。
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