愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
激しい雷雨が去ったあとのような静けさが寝室を包み込む。
眠る碧唯の隣で、南は言いようのない気持ちに包まれていた。
もしも妊娠したら……。
彼に抱かれ、友達以上の想いに気づいて幸せを感じたのが嘘のよう。
『子どもができたら俺とは離婚すればいい』
結婚前に離婚を示唆していた碧唯の言葉が、高みから南を深い闇に突き落とす。
子づくりが目的の結婚のため、碧唯は避妊をしていない。
もしもそんな夜がこの後も続けば……。
南はめでたく身籠り、当初の目的を果たしてしまう。そうしたらこの結婚は終わりだ。
(こうなる予想はできなかったの? どうして友情婚に頷いたの?)
子どもはもちろん、あたたかな家庭がほしいと本心を言わなかった自分を呪う。
「どうしよう……」
呟いた声は涙混じりになり、か細く震えた。