愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~

眠れずに朝を迎えたのは初めてかもしれない。
南は空がまだ薄紫色の時刻から起きて、リビングのソファでコーヒーを飲んでいた。


「にがっ」


濃いめの一杯を飲もうと淹れたコーヒーは想像以上に苦く、思わず声に出てしまうほど。普段はブラックを好むが、さすがにこのままでは飲みきれないとグラニュー糖を一本入れた。

昨夜、唐突に気づいた碧唯への想いをいったいどうしたらいいのか。

徐々に明けていく夜が南を焦らせる。

恋愛感情を求めない結婚をしたはずだった。
ふたりの間にあるのは友情だけ。愛や恋で心を消耗するような事態にはならない関係を望んでいた。

それなのに今、南の心には友情ではない感情がはっきりと輪郭を表している。
碧唯が求めていない愛を、南は持ってしまったのだ。一方的に。

それだけでも契約違反なのに、これで子どもを授かれば離婚確定だ。

――でも、もしも。
もしも碧唯にも、南と同じ感情が芽生えていれば……。
この結婚にも明るい未来があるのではないか。
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