愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
昨日までの南に対する碧唯の振る舞いに、わずかながら愛を感じるときがあった。
眼差しや、南に触れる指先に。
奇跡的に両想いの可能性も、なきにしもあらず……?
(って、そんなわけないじゃない。碧唯くんは昔から紳士的な人でしょ。優しく見つめられたのを好意と勘違いするなんて、どれだけ自意識過剰なの)
好きになった途端、勘違いも甚だしい。
そうだったらいいのにと願う心が、碧唯の言動を脳内で勝手に自分に都合よく変換する、とんでもない事態に発展した。
「とにかく、この想いは封印しよう」
今、南にできるのはそれだけだ。
決して日の目を見ない恋心を再び胸にしまう。
ぼんやりと考え事をしているうちに外はすっかり明るくなっていた。
冷えきったコーヒーを飲み干し、気持ちを切り替えて朝食の準備に取り掛かる。
昨日買い出しにいけなかったとはいえ、碧唯が先に暮らしはじめていたため多少食材はある。
近所のパン屋で買ったと思しきおいしそうなクロワッサンを見つけたため、洋風メニューに決めた。