愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
どうして私と結婚したんですか?

友情とは、これほど厄介なものだったのか。
碧唯が深く吐き出した息が、陽光射し込む昼時のカフェのざわめきに掻き消されていく。

南との生活がスタートした二日後。午前の仕事を終え、碧唯は外務省の庁舎からほど近いカフェを訪れていた。


「やっぱりここでしたか。前、座ってもいいですか?」


顔を上げると、そこに小西健太郎が人のいい笑みを浮かべて立っていた。

碧唯はどうぞと手で促し、食べ終えた中華風ボンゴレの皿をテーブルの端に寄せる。
イタリアでの生活が長かったせいか、無性にパスタが恋しくなる。定番のボンゴレをゴマ油とオイスターソースで中華風の味つけにしたそれは、帰国して以来、碧唯のお気に入りの一品だ。

案内してきた店のスタッフが小西の前に水を置き、注文を取ってから空の皿を下げていった。

外務省の欧州局政策課で一緒に働く後輩であり、高校時代の部活の後輩でもある。
髪のサイドを整髪料で固めリムレスの眼鏡を掛けた、いかにもまじめな風貌をしているが、ノリがよく明るい男である。
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