愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
「幸せ絶頂の新婚さんがため息なんておかしいですね」
「……聞いてたのか」
「あんなに大きければ聞こえますよ。店内じゅうに響いたんじゃないですか?」
「そんなわけあるか」
屈託のない笑みを浮かべ、小西が続ける。
「で、どうしたんですか? 南と――いや、奥さんと喧嘩でもしました?」
小西は南と同級生で友人でもあるが、先輩の妻を呼び捨てにできないと思ったのだろう、律義に言いなおして尋ねた。
「いや」
喧嘩はしていない。むしろ喧嘩のほうがどれほどよかったか。
「でもうまくいってないって顔ですね。話なら聞きますよ。なんせ俺はふたりを長年見守ってきた人間ですから」
小西は口角をニッと上げて笑った。