愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
彼の言葉は事実である。
敢えて違う点を言えば、見守るというよりは見張るが正しいかもしれない。――碧唯の命を受けて。
気の置けないかわいい後輩のポジションだった南を女性として意識したのは、大学四年生の彼女に初めて恋人が出来たときだった。
うれしそうに報告する南を碧唯は心から祝福できなかったのだ。
やっと紡ぎだした声は揺れ、そこで初めて南への好意に気づいた。
長くそばにいるうちに自分でも気づかずに恋心が育っていたらしい。
いつも明るく、人から頼られると放っておけない性分の彼女は、ときに抜けたところのあるのが逆に魅力的な女性だった。
思い起こせば、碧唯のそばには常に南がいた。もちろん友人としての付き合いだったため、頻繁に会うわけでも、連絡を取り合うわけでもない。
だが会うと誰といるより楽しく、そして癒される存在だった。
いつだったか、休日にランチをともにした後、駅で三歳くらいの女の子が泣いている場面に出くわしたときがあった。南はすぐにその女の子に駆け寄り、泣きじゃくる彼女を落ち着かせようとあやしはじめた。
迷子だとわかり駅員に引き渡したあとも、母親が現れるまでその子に寄り添い、歌を歌ったり昔話をしたりして気を紛らわせる彼女の優しさが、友達ながら誇らしかったのを思い出す。