愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~

落ち込んでいないと言っていたはずの南はいつになく酒が進み、いよいよカウンターに突っ伏した。

そんな彼女をタクシーに乗せ、自分のマンションに連れ帰った。

ベッドに下ろし、くたりと横になる上気した南の顔を見つめる。
いっそ酔いに任せて抱いてしまおうか。
既成事実を作れば友達だと言っていられなくなる。南を手っ取り早く確実に手に入れる方法だ。

そんな衝動に駆られたが、わずかに理性が勝り踏みとどまる。

碧唯は一カ月後に長年希望していたイタリアへの赴任が決まっており、タイミングも悪かった。

願いが通じて南をモノにしたとして、春から社会人になる彼女をイタリアへは連れていけない。遠距離恋愛を課すのも酷だ。――そもそも南にとって碧唯は友達以外のなにものでもなく、それは非現実的な杞憂であった。

それでも触れずにはいられなくなり、艶やかな唇に自分のそれをそっと重ねた。

南に一刀両断され、もはや友達以上の関係は望めないだろう。

そう諦めるいっぽうで、イタリア赴任が解かれた暁には南を自分のモノにすると誓った。
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