愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
とはいえ日本を離れている間に南に恋人ができる可能性だってある。
絶対に誰のモノにもならないでくれ。
祈りにも似た想いで、後輩の小西に南の近況を逐一報告してもらう手はずを整えた。男の陰が見えたら、すぐに連絡がほしいと。
そうして六年の月日が流れていく。
幸いだったのは、恋に明け暮れる時間がないほど南が仕事に没頭したことだった。彼女をそんな仕事に巡り合わせてくれた神に、碧唯は心から感謝した。
チャンスは突然訪れた。イタリアから一時帰国した際に会ったロマンジュで、南が『子どもがほしいな』と呟いたのだ。
折しも碧唯が外務本省へ戻るのが決定したタイミングだった。
南がどういう考えでそんな願望を口にしたのかは知らないが、大事なのはそれを達成するために必要不可欠な相手になること。この好機を逃すわけにはいかない。
しかしそこで長年積もり積もって醸成された気持ちを打ち明ければ、その重さゆえに南は碧唯を遠ざけるだろう。
そのとき、一瞬のひらめきが碧唯に舞い降りる。
社会的信用と叔父からの縁談攻撃を回避するために、あくまでも友達のまま結婚しようと提案した。そうすれば南が望む子どもを作れるし、お互いにとっていい解決法だと。