愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
そうして南をようやく腕に抱き、ひとつになった歓喜に打ち震えながら眠りにつこうとした碧唯は、一気に地獄に突き落とされた。
南が人知れずひっそりと涙を流していたのだ。
子ども欲しさに碧唯に抱かれたものの、気持ちが追いつかず、結婚した後悔が涙になったのか。それとも泣きたくなるほど、じつは碧唯が嫌いなのか。
迷う隙も与えないうちに結婚に持ち込んだのはいいが、南の本心を思いやる気持ちが欠けていたのは否めない。自分優先に物事を運んだ事実を南の涙によって気づかされた。
(俺はなんてことをしたんだ……)
南の願いに漬け込み、自分の願望を押しつけた。
結果、一番守りたい人を傷つけるとは。
これまででもっとも深いため息が碧唯から漏れる。
「またため息! っていうか、色気振りまくのやめてもらえます?」
「そんなもの振りまいてない」
「これだから自覚のない男は……」
今度は小西が頭を振りながら深く息を吐き出す。
「ほんとになにがあったんですか? 南、じゃなくて奥さんと結婚できて幸せいっぱいのはずじゃなかったんですか?」