愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
「南は俺のなんで」
睨むようにして宣言した碧唯はタクシー代を無理やり支払い、茫然とする沖山を残して「行くぞ」と南の手を引いた。
「あのっ、碧唯くん、ちょっと待って」
強く掴まれた手は痛いほど。横顔はいつになく強張っていた。
エレベーターに並んで乗った彼の肩が上下に揺れている。
「なに口説かれてるんだよ」
部屋に到着するなり不機嫌な声で問われる。怒りを感じる口調だ。
「口説かれてなんてない」
「〝お前にそんな顔はさせない〟? 〝かわいいと思ってた〟? ふざけるなよ」
いつも冷静沈着な碧唯に吐き捨てるように言われ、悲しい気持ちが込み上げてくる。
昨夜の光景がまざまざと脳裏に蘇った。