愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
「私は碧唯くんが――」
勢いで〝好きなのに〟と勢いよく言いかけて止める。そんな言葉をぶつけたら、ふたりは本当におしまいだ。
そのトリガーは引きたくない。懸命に喉の奥に飲み込んだ。
今夜はこれ以上、碧唯のそばにいられない。
戦慄く唇を噛みしめ、声を絞り出す。
「私、用事があるから」
こんな時間からいったいどんな用事だというつもりか、自分でもおかしな言い訳を告げて南は玄関を出た。
「みな――」
碧唯の声が閉じた扉に遮断される。南はエレベーターで階下に向かい、ちょうど乗客を降ろしたタクシーに乗り込んだ。