愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
友達じゃなかったんですか?
全身で訴えかけてきた南の姿に、碧唯は胸が痛いほどに熱くなった。
南が言いかけたのは〝好き〟だったのではないか。
奇跡とも言える突然の展開に反応が遅れ、あと一歩が及ばず、彼女を乗せたタクシーが遠くなっていく。それをなす術もなく見送りながら、碧唯は握りしめた拳で自分の腿を叩いた。
(俺はなにをやってるんだ)
唇を噛みしめ、憤りが胸の中を黒く渦巻く。
仕事だとわかりきっているのに、ほかの男と一緒にいるのを見て、思わず自分を見失ってしまった。南に落ち度はない。
友情を武器にして結婚まで漕ぎつけておきながら、未だに南の心を手に入れられていない焦りが無様な嫉妬に繋がった。
南の気持ちを推し量って怖気づき、好きだと言えずにいた自分が情けない。
遠くなっていくテールランプが見えなくなると、碧唯は後悔いっぱいに夜空を振り仰いだ。