愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
すべてを話し終えたあと、雅美がぽつりと呟く。
「お母さんのせいじゃないわ。それを理由にして私が逃げていただけだから」
両親の離婚と自分の結婚とは別問題だ。人のせいにはしたくない。
碧唯を失うかもしれないと臆病になった自分の責任だから。
「でもね、南、碧唯さんはあなたを心から愛していると思うわ」
膝の上に置いていた南の手に雅美が手を重ねる。
「……どういう根拠?」
友達として長年付き合ってきたのだから嫌われてはいないと思うけれど。
「お母さんね、こう見えて人の心の動きには敏感なの。人の気持ちってどう隠しても眼差しに出ちゃうものなのよ」
夫に女性の影がチラついたのも少なからず影響しているだろう。敏感にならざるを得ない過去があったから。