愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
南が碧唯に電話しやすいようにしてくれたのだろう。
その厚意に応えるべく、バッグからスマートフォンを取り出す。マンションを飛び出してから、碧唯の着信履歴は二十件を超えていた。
名前をタップし耳にそっとあてると、ワンコールもしないうちに彼が出た。
《南、今どこにいる?》
焦ったような声だった。
「実家にいます」
《そうか。よかった……》
安堵した声が耳に届く。着信の件数からも南を心配していたのは明白。あんな状況でマンションを飛び出せば当然だろう。
「ごめんね、碧唯くん」
《いや、無事ならそれでいい》
「……碧唯くん、明日の夜、話したいことがあるから時間取ってくれる?」
電話より、顔を見て直接話したい。
《俺も話がある》