愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
ほかの人と付き合い、深層心理で〝この人ではない〟と気づいていたから相手にのめり込めなかった。彼氏にはつくづく失礼だと思うし、振られたのは当然の報いだ。
きちんと恋愛できないのを両親の離婚のせいにしていたのも、碧唯への想いに気づきたくなかったから。
あの夜、碧唯から『俺にすれば?』と言われたが、冗談半分だろうと相手にしなかった。いや、できなかったのかもしれない。
本気にして傷つき、碧唯を失うのが怖かったから。
その夜、碧唯は南に指一本触れなかった。それは、碧唯に女性として見られていないと思い知らされた夜だった。
それ以降、南は友人に徹する以外になかった。恋心に気づいているような、気づいていないような、自分の気持ちなのにわからないまま。
そんな想いには決着をつけなければならない。
ある種の使命のように感じながら、南は翌日、洋服やメイク道具を亜矢に借り、実家から職場に向かった。
出社早々、沖山を近くのミーティングルームに呼び出す。
「部長、昨夜は見苦しいところをお見せしてしまい……。失礼いたしました」