愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
シャカシャカとシェーカーの小気味いい音が響く中、店内に控えめなジャズが流れる。
ここに流れる時間と空気が、南は大好きだ。
でもそれはたぶん、碧唯とふたりでいるからこそだったのだと思う。
この場所でふたり一緒に過ごす時間が、仕事漬けの毎日にほんのりと彩を添えていた。
決して頻繁とは言えない碧唯からの連絡を、心のどこかで待ちわびていたのだ。
「お待たせいたしました」
ほどなくしてモスコミュールとミモザがふたりの前に置かれた。
グラスを傾けて、ふたりの再出発を祝う。
オレンジジュースの甘酸っぱさとスパークリングワインの清涼感が口いっぱいに広がるように、心も満たされていく気がした。