愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
ドキッとした。
「知ってたの?」
寝息を立てていたから、てっきり眠っているものだと思っていたが。
まさか見られていたとは。
「俺に抱かれて、そんなに嫌だったのかって。そう考えたら南を抱くわけにはいかなくなった。だから毎晩残業してロマンジュで時間を潰して、南が寝た頃に帰ってきた」
そんな事情を抱えてロマンジュにひとりで行っていたのかと、驚きとともにうれしさが込み上げてくる。
「私が泣いたのは、これで妊娠したら碧唯くんと離婚しなきゃならなくなるって思ったからだよ」
決して嫌だったわけではない。むしろその逆。自分の気持ちに気づいて、どうしたらいいのかわからず不安に襲われた末の涙だった。
「離婚?」
碧唯が訝しげに目を細める。