愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
「いいか、ふたりとも。ここだけの話だからな」
「わかってる。聞いたあとはすぐに忘れるから」
千賀子も真顔で深く頷き返した。
「瀬那さんに頼まれてた」
「……へ?」
「え?」
ここで碧唯の名前が出てくるとは思いもせず、千賀子と揃って間抜けな声が出た。
「イタリアにいる間、南の動向を探っておいてくれって」
「どういうこと?」
南の代わりに千賀子が尋ね返す。
「南に変な虫がつかないように見張ってくれって言われたんだよ」
「なんで?」
「そんなの瀬那さんが南を好きだからに決まってんだろ。だから千賀子に南の近況をしつこく聞いてたわけ」
思いがけない暴露話だった。
碧唯が小西にそんな頼みをしていたとは――。