愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
「南がそうしたいって言うなら」
「……喧嘩する?」
碧唯の目の奥を覗き込むようにする。微かに期待しているように見える南の髪をくしゃっと撫でた。
「望むところだと言ってやりたいが」
上体を起こして南の手を拘束する。
「そんな不毛な喧嘩をするつもりはない」
唇を優しく重ねるだけのキスをして、彼女の体を起こした。
「うじうじ考えていても仕方がない。せっかくの休みだ、どこかに出かけよう」
「雨降ってるけど」
南は窓のほうを見ながら指を差した。
どうりでレースのカーテンから射す光が弱いわけだ。
六月下旬の梅雨空は今日も健在らしい。
「雨が降ってない場所を目指してドライブしよう」
「……え?」