愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
《卒業後も交流があるのって、同じ部活の女子の中では南くらいじゃない?》
「それはたまたま再会したからであって」
カフェで南がしっかりお金を持っていたら、お互い気づかずにすれ違っていただろう。その後の交流もなかったに違いない。
彼は素晴らしい先輩だったし、羨望の眼差しを向けてはいたが、彼に対する好意はなく、碧唯だってきっと同じ。
友人としてつきあってきた約十年の間に彼には恋人がいた時期もあり、それこそ勢いで結婚の話になっただけ。南があの夜『子どもがほしい』と問題発言をしなければ、おそらく結婚には至らなかったはずだ。
《あーだけど、小西くん、がっかりするだろうな》
「どうして?」
《やたらと南の近況を聞きたがるから》
小西健太郎は、南と千賀子の同級生である。同じく弓道部に所属していた部活の仲間で、たまに三人で飲んだりもする。
ちなみに彼も外務省に勤めており、部活だけでなく仕事においても碧唯の後輩だ。
「それはただ単に友達の状況が知りたいだけでしょ」