愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
「お、おかしくないって意味?」
「ああ」
感嘆にまみれた声だったため鼓動がドキッと弾む。
そこで初めて碧唯の姿を見て、思わず息をのんだ。
薄っすらとグレンチェック柄が入ったグレーカラーのスリーピースは、体にフィットしたラインが美しく、光沢がかった生地がフォーマル感を増している。
ネイビーのネクタイが南のドレスの色とお揃いだ。もしかしたら写真を見て合わせたのだろうか。
「碧唯くん、素敵」
目をまたたかせて彼を見つめる。
「そう? べつに普通だよ」
なんでもないような口ぶりだが、碧唯はわずかに視線を逸らした。
(もしかして照れてる? 普段クールだけど、碧唯くんでも照れたりするんだ)
知らない一面を見た気がして、なんともいえずくすぐったい気持ちでパーティー会場へ向かった。