愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
大使館に用意された車に乗っておよそ十分、南たちはローマ北部に位置するパリオリへやって来た。のどかな雰囲気が漂うエリアは、ローマ屈指の高級住宅街だそうだ。
社交好きな奥様のために、外務・国際協力大臣は月に一度人を集めてパーティーを開いているらしい。碧唯も年に何度か招待されるそうだ。
広い敷地内に入ってすぐ車を降りると、目の前に立派な邸宅がそびえたつ。白く太い柱とアールの形をした大きな窓、素焼きや陶製の屋根瓦といった地中海スタイルの外観である。
真っ青な空に映える豪邸だ。
エントランスの前には水を豊富に称えた噴水があり、天使を模した石像から絶えず水が流れている。
「ここは……?」
「外務・国際協力大臣のご自宅」
さすがヨーロッパの要人。スケールが違う。
南が呆けたようにしていると、黒いタキシードを着た三十代くらいのイタリア人男性が近づいてきた。
『会場はこちらです』
イタリア語のため南にはわからないが、碧唯に「行こう」と腰に手を添えられた。
突然だったため小さく「ひゃっ」と声を漏らすと、碧唯に「フィアンセらしくして」と耳元で囁かれた。