愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
もしかして溺愛されてます?
結婚する実感がないまま、およそ一カ月が過ぎた。
イタリアと日本とで、碧唯と遠く離れていたせいもあるだろう。
もちろん連絡は比較的マメに取り合っているが、恋人として過ごす時間が決定的に足りない。なにしろ南たちは、たった一度キスを交わしただけ。それも軽く触れるだけのものだった。
高校生のカップルだって今どきはもっと踏み込んだ関係を築いているだろう。
(ううん、でも私たちは友情婚カップルだし。そういう甘さはあまり必要ないから。……私の希望で子づくりはするけど)
あくまでも友達だと自分に言い含めるいっぽうで、空港でのキスを思い出すだけで心臓が騒がしくなる。
いったいどうなっているのだ。
ずっと友達だったせいだと結論づけて頭を切り替え、パソコン画面に映し出されたハフモデル――集客力・売上高の分析や予測に使用するモデル式の分析に取り掛かる。ある小売業から依頼された新規出店の候補地を比較分析するためのものである。
「倉科、ちょっといいか」
各要素の値の変化と影響度を試算していると、部長の沖山から声が掛かった。
作業の手を止め彼のデスクへ向かう。