愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~

「時間はあるか?」
「お急ぎであれば作ります」
「じゃ、これを頼みたい」


沖山が南にクリアファイルに挟まれた資料を差し出す。

中身を取り出してパラパラとめくると、不動産会社からのリサーチ依頼だった。人流の把握によるエリア分析である。
人力による通行量調査では、一地点でのデータしか取得できないうえ継続調査も難しい。その場限りのデータ活用になるため、任意の地点における一定条件の人流データの取得はエリア分析において非常に重要である。


「承知いたしました。月曜日の朝までに仕上げたいと思います」
「仕事が速いのは助かるが、無理はするなよ。体を壊して婚約者に怒鳴り込まれる事態は避けたい」
「そんなことはしませんから大丈夫です」


仕事を大事に思う気持ちは碧唯だって同じ。彼も誇りをもって外交官の道に進んでいるのだから。
それに碧唯が怒りにまみれる姿なんて想像もできない。いつもクールで感情の起伏を見せないタイプだ。


「俺はこのあと外出して直帰だから、ほどほどにな」
「はい」


南は、沖山から受け取った資料を手に自分のデスクに戻った。
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