なぜか推しが追ってくる。
恭くんはその笑顔をもう一度部長にも向けて言う。
「部長さん、今日はありがとうございました」
「こちらこそ、またいつでも見学に来てくれ! 歓迎する!」
何やらとても仲良しになったらしい。いったいどのあたりで気が合ったのだろう。
そしてわたしは、ご機嫌なままの恭くんと流れで一緒に帰ることになった。
……と言っても駅までだ。当然だけど、恭くんも普通の高校生みたいに電車通学してるんだなあと実感する。
「瑞紀ちゃん、今日は部活見られて楽しかったよ」
もうすぐ駅に着くというときに、恭くんが改めて言った。
「突然見学なんて無理言ったのに受け入れてくれて、皆さん優しい人たちだった」
「でしょ? 良い人たちばっかなの」
「瑞紀ちゃんにとってあの部は、すごく居心地のいい場所なんだね」
「……うん」
活動は週に数回程度、しかも幽霊部員多数の緩い部活だけど、この演劇部はわたしの大事な居場所の一つだと断言できる。
可愛がってくれる先輩たちや、わいわいしゃべりながら一緒に道具作りをする同級生たちがいて。
そして何より、演劇というものに関われる場所。