なぜか推しが追ってくる。




「あっちでマネージャーに待ってもらってるんだ」




どうやら恭くんは、直接現場へ行くところを、わたしを誘うためだけに学校へ寄ったらしい。


校舎側へと歩いてくる皆に逆流するのって謎の背徳感があるな……とか思いながら校門を出ると、少し先の方に車が一台停まっていた。

恭くんはその車のドアを迷いなく開けると、「お待たせしました早坂さん」と言って乗り込んだ。




「瑞紀ちゃんも乗って」


「えっと……。失礼します……」





運転席に座っていたのは、二十代もまだ前半だろうと思われる男性。

銀縁の眼鏡がよく似合う、色白の美形だ。彼が恭くんの言うマネージャーなのだろうけど、彼自身がタレントだと言われても十分納得できる。




「どうも。恭のマネージャーをやってる早坂です」


「あ、はじめまして。恭くんのクラスメイトの武藤瑞紀です」





早坂さんは、どこか胡散臭さのある笑顔を浮かべている。

そして、その笑顔のまま視線に鋭い色をにじませ、わたしの目を見た。




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