なぜか推しが追ってくる。
「『はじめまして』じゃなく、『お久しぶり』の間違いじゃないか?」
「え……?」
わたしは一瞬言葉を詰まらせ、唾を飲み込む。
それからすぐに首を振った。
「初対面だと思いますけど……」
「……そうか。それは失礼しました。恭からよく話を聞くから会った気になっていた──ということにしておこう」
早坂さんはそう言うと、ふっと笑ってエンジンをかけた。
……なんかというか、ちょっと裏がありそうな人だ。
形容しがたい居心地の悪さを感じたわたしは、車が動き出してからは黙って窓の外を見ていた。
恭くんと早坂さんも、仕事に関する業務連絡をちょこちょこするぐらいで、基本的には静かだ。
……授業サボったわけだし、心配させないよう真緒と数馬には連絡しておこうかな。
そう思い立ってメッセージを入れたところで、車は目的地に到着した。
「おいで。話は通してあるから心配しなくても大丈夫」
「うん」