なぜか推しが追ってくる。
恭くんの後ろにピタリと付いて入ったそこは、それほど大きくもないレンタルスタジオだった。
既に関係者らしき人たちが何人か集まっていて、楽しげに談笑している。
「おはようございます」
部屋に恭くんの明かるい声が響いて、皆さんの視線がこっちに集まる。
そうなると、見慣れない人間の方に自然と目がいってしまうわけで。
「おはようございます。その子は?」
「昨日言ってた、学校の友達です」
いたたまれない。
できれば早く壁になりたいわたしは、愛想よく微笑んでおしとやかに頭を下げた。
「恭くんに誘ってもらったので、お言葉に甘えて見学させて頂きます」
必殺、よそ行きバージョン。
学校では見せないレアな姿である。
すると、わたしたちと同い年ぐらいの一人の男の子がこちらにやってきた。
名前は把握してないけど、確かこの人も俳優だったはず。
彼は親しそうに恭くんの肩へ手を回した。
「友達? すんげえ美人じゃん。隠すなよ、お前の彼女なんだろ?」
「残念ながらまだ違うよ」