なぜか推しが追ってくる。
そんな偏見に満ちた考察をしたわたしは、そのままよそ行きバージョンを継続して、静かに笑顔を浮かべておく。
とはいえ、彼もどうも本気でわたしをナンパするつもりはないらしい。
恭くんをからかうためにわたしに絡んでいるという感じ。
これはなんというか……。
ごちそうさまです!!
こういうオフショット的なの目の前で見られるの幸せすぎでは。
思わず手を合わせて拝んでしまいそうになるのを耐える。
……と、背後でドアが開く音がした。
「ちょっと。そんなとこ立たれたら通れないわ」
可憐。その表現がぴったりくるような、甘く女の子らしい声。
振り返ると、ふんわりとウエーブのかかった髪を二つ結びにした目の大きい可愛い女の子が立っていた。
歳はこちらもわたしと同じぐらいだろう。
彼女が腕を組んで苛立っているらしいのを見て、ようやくわたしが入り口を塞いでしまっていることに気が付いた。
「すみません……」
……ていうか、この人って確か。
わたしが名前を思い出す前に、恭くんがにこやかに彼女に挨拶した。
「おはよう原さん」