なぜか推しが追ってくる。



わたしは、この舞台のキャスト情報を見たときのことを思い出す。


恭くんがヒーローを演じることばかりに気をとられていたけど、そういえば原さんはこの舞台のヒロイン役なんだ。

『モデル原麗華初舞台』ってネットニュースになってたもんな。




「ところでこの制服の子は? スタッフさんの娘さんとかですか?」




原さんの興味が再びわたしに向けられた。既に伸びている背筋をさらに伸ばす。




「いや、その子は恭のガールフレンド……じゃなくて、クラスの友達?」


「あ、はい。恭くんにお誘いいただいたので見学を……」


「天羽くんの? ふーん」




原さんは、まるで値踏みするかのようにわたしをじっくり観察する。




「ま、普通の学校にいる分にはかなりモテるのかしらね」


「え」


「あたしたちの基準で考えたら勝負にもならないでしょうけど。図々しくこんなところまで来て、スカウトしてもらおうと狙ってるならやめた方が身のためじゃないかな?」




彼女は「うふふっ」と可愛らしく首をかしげて笑った。



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