なぜか推しが追ってくる。




「なあ恭。彼女何者?」


「ごく普通の女子高校生だよ」


「信じられるか。それにあの子の顔、よく見たらどこかで見たことあるような気がするんだよな……」




そう言って瑞紀ちゃんの顔をじろじろ見るので、何となく気に入らなくて手で視界を塞いでやった。

さっき美人だとか言ってあれこれ騒いでたし、こいつなら本当に後でこっそり声を掛けに行きかねない。

それに、先ほどのように演技をしているときの彼女はいくらでも見て欲しいが、素のただただ可愛い瑞紀ちゃんをあまり他の男の目に晒すのは癪だ。



その瑞紀ちゃんは、軽く呼吸を整えると、複雑そうな顔をしている原麗華の方を向いた。

原麗華は先ほどの高圧的な態度とは打って変わり、瑞紀ちゃんの視線にたじろいでいる様子だ。




「演劇はチーム全員で作り上げるものなんです。全員の気持ちが同じ方向を向かないと上手くいかない。……いくら気に入らない仕事でも、引き受けたからには最後まで真剣に取り組んで、自信を持ってわたしたち観客に見せてほしいです。お願いします」





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