なぜか推しが追ってくる。



瑞紀ちゃんの気の強い瞳が、まっすぐ原麗華の目をとらえる。


自己中心的で、下に見た人の話を聞こうとしない原麗華。

そんな人と会話をするためには、まず何らかの形で自分に興味を持たせる必要がある。

そこで瑞紀ちゃんがとったのが、圧倒的演技力を見せつけるという方法。彼女のことをただのミーハーな女だと軽視していただけに、その効果は絶大だった。


原麗華は、小さな声で「その通りね」と呟いた。そして、




「……あたし、次の仕事に行かないといけないので失礼します。今度は、本当に時間だから。お疲れ様でした」




いつもよりいくらか弱々しく頭を下げて、スタジオを出ていった。


しばらくの間、静寂が訪れる。

だけど皆の表情は、どこか晴々していた。


……次の展開は何となく予想できる。


皆、瑞紀ちゃんに寄ってたかって今の演技を褒めたり、素性を探ろうとしたりするだろう。


だから俺は、それより先に彼女に駆け寄った。




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