なぜか推しが追ってくる。




「おにぎり買ってきたよ。ツナマヨと昆布どっちが好き?」




スタジオからわたしを連れ出した恭くんは、近くの川原でピクニックをしようと言いだした。


途中コンビニに寄った恭くんが、おにぎりを二つ取り出して見せる。

そういえばもうお昼時。結構お腹が空いている。




「昆布がいい」


「はい」


「ありがとう」




受け取ったおにぎりのフィルムをピリピリとはがす。

はがしながら、恭くんに何を言うべきか考える。

冷静になればなるほど、さっきの行動が恥ずかしくなってくる。何か弁解しなければ。


だけど考えている間に、逆に恭くんが口を開いた。




「ねえ瑞紀ちゃん」


「……ん」


「抱きしめていい?」


「…………ふぇ?」




危っっっっっな。

おにぎり落すかと思った。転がって穴に落ちてネズミに食われるとこだった。どこの昔話だ。


まあ待て一旦落ち着こう。お茶でも飲もう。

そう思ってペットボトルを取り出すも、キャップを取るのを忘れてガツンと勢いよく歯をぶつけた。





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