なぜか推しが追ってくる。
神聖視する天羽恭と付き合うなんてできない。……武藤の言うそんな気持ち、生身の本人が隣にいればすぐに変わってしまうと、簡単に想像できた。
だから、天羽転校してきた日、学校案内の名目で話す機会を得たときに言った。
武藤に思わせぶりな行動を取るのはやめろ、と。
このときはまだ、芸能人である天羽がたまたま隣の席になったファンに、ちょっかいを出して遊んでいるだけだと思った。
『好きになった人にアプローチするのは当然のことじゃない?』
やわらかな笑顔でそう返されて、やっと認識の甘さを知った。
顔がよっぽどタイプだったのか、繰り返される奇行がツボにはまったのか。とにかく、あの短時間で天羽は武藤のことを気に入ってしまった。
『清水くんはライバルみたいだね』
天羽恭は悪い奴ではない。
話した感じから、それが伝わってきた。オレはそういう人を見る目に自信があるだけに焦った。
きっかけが一目惚れだろうが何だろうが、こいつは多分、一度その気になったら簡単に気持ちが変わるタイプじゃない。